アパートの騒音問題。オーナーにも責任が?
賃貸物件のオーナーであれば、入居者からのさまざまなクレームに直面したことも少なくないでしょう。
その中でも「騒音問題」はよくあるトラブルであり、解決が難しい問題の一つでもあります。
そこで今回は、オーナー様を悩ませる騒音トラブルについて、具体的にどのような問題があるのか、トラブルが起きた時の対応方法などについて詳しく解説していきます。
トラブルを未然に防ぐためにも騒音問題について理解しておきましょう。
騒音問題の実態
集合住宅に一度でも住んだことがある人であれば、誰でも一度は気にしたことがある「騒音問題」。
コロナ禍でのお家時間増加に伴い、コロナが落ち着いた今でもリモートワークを推奨している会社の増加などにより家で過ごす時間は相対的に増えてきています。
そこで問題になりがちなのが、入居者同士の騒音問題です。
生活時間の違いによる家電の作動音や子どもの足音やペットの鳴き声、工事で発生する騒音など要因はさまざまありますが、
株式会社AlbaLinkが行ったアンケートによると、マンションやアパートなど集合住宅に住んでいる78.2%が「騒音に悩んだ経験がある」と回答しています。
参照:【アパート・マンションの騒音トラブルランキング】男女500人アンケート調査|株式会社AlbaLink
自身が被害者にも加害者にもなり得る騒音問題ですが、実際にどのような種類があるのでしょうか。
騒音の原因
騒音問題の中で一番の要因は「足音が響く」というものです。
小さな子どもの走り回る音が下階や周囲の部屋に響いてしまいトラブルに発展したり、寝ている時間に上の階からの足音が気になって眠れないなどのクレームが発生したりすることが考えられます。
実際に注意されるまで気が付かなかったというケースも多く、住民間のトラブルになりがちな問題の一つです。
足音の他にも、
・洗濯機や掃除機などの家電の作動音
・テレビや楽器などの音響設備
・人の話し声やペットの鳴き声
などが原因となっています。
騒音問題のほとんどの原因が、生活していく上で欠かせない事柄が多く、そのためなかなか根本的な解決が難しいこととも言えます。
また、騒音と感じる人の感じ方もさまざまであり、お互いが譲り合い分かりあって生活してい可なければトラブルの解決は難しいでしょう。
建物の構造によって音の響きも変わる
集合住宅の中でも、建物の構造によって音の響き方は変わってきます。
木造住宅は遮音性能が低く、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などは遮音性能が高い造りになっています。
また、木造住宅の中でも築年数が古い物件であれば、遮音材の劣化やサッシが古いことにより遮音性が劣ることもあります。
騒音トラブルになる音の大きさの基準
騒音だと感じる音の大きさや種類は人によりますが、数値的にみてどの程度の音の大きさが騒音と判断されるのでしょうか。
騒音には「受忍限度」というものが定められており、これを超えた音量は騒音として認められる可能性が高くなります。
「受忍限度」とは、通常受け入れるべき不快や迷惑の程度のことで、受忍限度の具体的な判断基準は明確には定まっていませんが、各自治体が設けている場合もあります。
一般的に生活音と判断されるのは40~60デシベルの範囲です。
日常生活の中で発生しているデシベルの詳細は以下の通りです。
分類 | 詳細機器 | 騒音レベル(デシベル) |
家庭用機器 | 掃除機 | 約60~76 |
洗濯機 | 約64~72 | |
家庭用設備 | エアコン | 約41~59 |
換気扇 | 約42~58 | |
音響機器 | ピアノ | 約80~90 |
テレビ | 約57~72 | |
その他 | 犬の鳴き声 | 約90~100 |
子どものかけ足 | 約50~66 |
70デシベル以上になってしまうとうるさいと感じ、90デシベル以上の音が長時間なり続けると我慢ができなくなると言われています。
日中生活する中で、一般的にストレスを感じずに暮らせるのが50デシベル以下になります。
参考:生活音で騒音になる基準と目安とは db(デシベル)で徹底比較| 株式会社スムリエ
瞬間的に60デシベル以上の音が出てしまうことは避けられず、その音が一定時間以上続いたり頻繁に聞こえてきたりすることなどにより受忍限度を超える、という判断になります。
トラブルが起きた時のオーナーとしての責任
騒音トラブルが起きた時、物件を所有しているオーナーにはどのような責任があるのでしょうか。
貸主(=オーナー)には、賃借人に対して「使用収益させる義務(民法601条)」があります。
家賃の対価として平穏に通常の生活を営める良好な住環境を提供する責任があり、騒音トラブルを放置していると騒音による被害者から引越し費用や損害賠償を請求される場合があります。
管理を委託しているのであれば、トラブル発生時に管理会社へ連携して早急に対応してもらいましょう。
さらに、入居者に害が及ぶ欠陥がある賃貸物件は、入居者に対して告知をする必要があります。
入居者に害が及ぶ欠陥とは、大きく分けると3つの瑕疵があります。
- 物理的な瑕疵:雨漏りなどの建物に関する欠陥
- 心理的な瑕疵:事故物件などの心理的な欠陥
- 環境的な瑕疵:騒音、悪臭など生活環境に関する欠陥
騒音は環境的な瑕疵に当てはまりますが、環境的な瑕疵は人によって感じ方が異なるため、入居者に伝える義務がどこまであるか判断が難しいとされています。
何度も騒音トラブルが起きている場合や、オーナーが騒音に気づいている場合には事前の告知義務があるため気をつけましょう。
トラブルが大きくならないためにも、問題に気付いた時点で素早い対応が必要であり、物件オーナーとして正しい知識を備えておくことも重要です。
騒音が起きてしまった時の対処方法
実際にトラブルが発生した場合、オーナーはどのように対処すればいいのでしょうか。
オーナーによる現状の把握、現場確認
まず最初にオーナー自身が現状を把握することが大切です。
第三者であるオーナーが客観的にどの程度の騒音が起きているのか、被害者を訴えている入居者だけでなく、他の近隣の入居者からも話を聞きましょう。
いつ・どこで・誰が・どんな音が・どのように、などといった詳しい内容を確認しましょう。
この時、被害者の言うことだけを鵜呑みにするのではなく、先入観を持たずに現状確認することが重要です。
入居者へトラブルが起きたことを周知する
現状を確認できたら、入居者へトラブルが起きていることを周知します。
ポスト投函や掲示板への貼り出しなどで通知し、なるべく被害内容について詳しく記載します。
騒音を出している当事者に自覚がない場合も多く、この掲示をきっかけに解決することもあります。
また、他にも被害を受けている入居者がいる場合、言い出しやすくなることでその他のトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
騒音対象者への確認・改善依頼
事実確認をし、通知を行なっても改善されない場合、騒音を出している入居者へ事実確認と注意喚起を行いましょう。
これ以上大きなトラブルへ発展しないよう注意をしながら改善を依頼することが重要です。
この際、被害を受けた入居者やオーナーへ通知した入居者を具体的に伝えてしまうと、直接的な被害が生まれる可能性もあるため気をつけましょう。
被害を受けた入居者への報告
被害を受けた入居者へどのような注意喚起を行なったのかを報告し、様子を見ましょう。
報告や対応が遅れると、被害を受けた入居者の不信感が募り更なるクレームへと繋がりかねません。
騒音対象者となかなかコンタクトが取れない場合など、対応が遅れる場合は経過報告することも有効です。
トラブル発生時の注意点
トラブルが発生した際、早急に対応せねば、と冷静な判断ができなくなってしまうことも考えられます。
誤った対応をしてしまわないよう、落ち着いて客観的な判断ができるように心がけましょう。
被害者の話を聞いただけでは、妥当な判断はできません。
他の入居者へのヒアリングや自身で状況確認することで、どちらかに肩入れをせず中立の立場で判断しましょう。
クレーム対応を行った際には、どのような対応を行ったか具体的に記録を残しておくことも重要です。
後々大きなトラブルに発展した場合に、自身でどのような対応を行ったのかが残っているだけで、オーナーとしての責任を果たしているという証拠の一つになることもあります。
対応が難しく、大きなトラブルに発展しかねない騒音トラブル。
管理を委託している場合には管理会社に相談をし、対応を依頼しましょう。自主管理の場合であっても弁護士などの専門家に相談できる環境を整えておきましょう。
騒音トラブルを未然に防ぐために
起こってしまえばトラブル対応が大変ですが、トラブルが起こらないよう未然に防ぐことが重要です。
大掛かりな防音・遮音対策ができなくてもホームセンターなどで揃えられる材料で対策することも可能です。
窓の隙間などに貼ることで隙間を塞ぎ、騒音を防ぐことができる「遮音テープ」や、床材をクッションフロアなどの柔らかな素材にすることで足音が階下に響かないようにするなどの対策方法があります。
他にもオーナーができることとして、入居者と面識を持ち日常的に挨拶をすることがトラブル防止にも繋がります。
さらに、実際にトラブルが起こってしまった際にも比較的スムーズに対応が進められるでしょう。
オーナーとしてできることを
騒音問題以外にも集合住宅であれば、入居者同士のトラブルは完全には避けられません。
オーナーの役割として、トラブルが起きないよう未然に防ぐこと・トラブルが起きた際には早急に対応することが大切です。
管理会社に任せきりにならず、入居者との交流を図ってみるのもいかがでしょうか?