日本の空き家問題の原因は?リスクや解決策を解説

少子高齢化により日本の人口減少問題は加速を続けています。

このままでは人口は減り続ける一方ですが、さらにそこで浮き彫りとなるのが「空き家問題」

日本の空き家は全国的に、人口の減少と反比例して増え続けています。

親から相続したが全く手を付けられていない、売れる状態ではないという理由で放置されている空き家が多く、総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点での空き家は全国で約848万9000戸と過去最大となっており、そのうち活用の目処が立たない長期放置の空き家は国内に349万戸と約40%を占めています。

そこで今回は、長期放置となっている全国的な空き家の現状や問題点、それを解決する空き家の活用方法について解説していきます。

そもそも「空き家」とはどんな状態?

まず、日本の空き家とはどういった状態の住宅のことを指すのか説明します。

上記の「平成30年住宅・土地統計調査」による調査の約848万9000戸の空き家の内訳は、

・「賃貸用の住宅」が431万戸

・「売却用の住宅」が29万戸

・「二次的住宅」(別荘等)が38万戸

・「その他の住宅」が347万戸

となっています。

 

このうち社会問題となっている空き家を指すのは「その他の住宅」となります。

活用の目途が立たない=誰も住んでいない、使っていない放置された物件のことを指し、売却中、賃貸募集中の物件は該当しません。

特定空き家

さらに、空家等対策特別措置法に基づき、特定空き家として登録されてしまうと土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなるなど、所有者にとっても大きなデメリットがあります。

特定空き家の定義は下記のように明記されています。

・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

・著しく衛生上有害となるおそれのある状態

・適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態

・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

誰も住んでいなくとも、庭木の手入れや建物の保護など、近隣住民に迷惑をかけないよう所有者の役割は果たさなければいけません。

しかし、実際のところ、所有者がそこまで手が回らず特定空き家に指定されてしまったり、そもそも所有者が不明であったりなど、問題は山積みです。

空き家が増え続ける理由

野村総合研究所が2018年に発表したレポートによると、2033年には国内の空き家数は1,955万戸、空き家率も現在の2倍の27.5%になると予測しています。

ここで指す空き家とは、上記の賃貸用・売却用・二次的・その他の住宅の総数ですが、27.5%が空き家となると「4件に1件が空き家となる」となれば想像しやすいでしょう。

10年もしないうちに、住宅街も空き家だらけとなってしまう状況が近づいているのです。

では、どうしてそんなに空き家が増えてしまっているのでしょうか。

税金問題

まず一つ目に税金問題が大きな要因としてあります。

空き家である住宅を壊して更地にすることで、所有者が支払う固定資産税と都市計画税の金額が跳ね上がってしまうのです。

空き家であっても住宅が建つ土地は「住宅用地」として、固定資産税・都市計画税の軽減措置が適用されています。

住宅が建っていることで、土地にかかる固定資産税は最大6分の1、都市計画税は最大3分の1まで負担軽減されますが、住宅を解体し更地に戻すと、この軽減措置が適用されなくなるのです。

さらに解体するのにもコストが平均して100万円程度かかるとなると、空き家をそのまま放置される要因となっています。

しかし、壊さず管理もしないでいると、今度は「特定空き家」に指定されてしまい固定資産税の優遇措置が受けられなくなってしまう為、何かしらの対策は必要であると言えます。

核家族問題

次に、現実問題として「管理することができない」という現状も考えられます。

空き家が増加している原因の一つには、「少子高齢化」や「地方の人口減少」の影響もあります。

親世代の住んでいる物件で、子どもがみな地方から上京して遠くで暮らしている場合、その物件に住む人がいなくなれば空き家となってしまいます。

本来管理すべき子どもたちが上京して都会で暮らしている場合、自分にも家族がいたり、マイホームを購入したりしていれば、実家には戻ってこないという現状も大きく関係しています。

管理をするにしても、一年のうちに何度も誰も住んでいない家に何時間もかけて向かうのもなかなか現実的ではありません。

都市部での核家族での暮らしが当たり前になってきている今、地方の空き家問題が顕著になってきていると言えるでしょう。

空き家が抱えるリスク

では、ご自身で所有している物件が空き家になってしまった場合、どのようなリスクが考えられるでしょうか。

①景観が悪くなる

近隣や地域への悪影響からすると、老朽化した家屋が倒壊したり、雑草が伸びるなどして近隣の敷地へ侵入してしまったりして、地域の景観を損なう危険性が高まります。

②犯罪に利用される恐れがある

次に、犯罪面からすると、ホームレスや犯罪者などの不法侵入や不法占拠、粗大ゴミなどの不法投棄、放火の原因になるという問題があります。

③住宅の価値が下がる

そして人口が減少して住宅の需要が減っていくなか、空き家が増える一方で需要と供給のバランスが合わなくなっていけば、市場での住宅自体の価値が下がってしまうという問題もあります。

空き家対策特別措置法

さらに、税金問題の際にも触れましたが、特定空き家に指定されることのリスクも考えられます。

 

国が、増え続ける空き家問題に対処するため、「空家等対策の推進に関する特別措置法」を2014年に制定しました。

この法律によって、空き家の所有者は「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努める」ことと定められ、適切な管理わされていない空き家の所有者に対しては、行政が助言・指導・勧告・命令といった指導ができるようになりました。

そして勧告したにもかかわらず状況が改善されなかった場合は、行政は命令を出すことができ、その命令に違反すれば50万円以下の過料を科されることになります。

 

さらに、命令を受けた空き家に改善が見られない場合、行政が所有者の代わりに対処し、その費用を所有者に請求する「行政代執行」が行われることがあります。

例えば、老朽化による倒壊の危険がある家屋を放置していたり、庭木をほったらかしにしている場合、行政が建物の解体や樹木の伐採を行い、その費用を所有者に請求します。

 

行政から命令を受けるということは、最も厳しい通告であり、空き家をこのまま放置し続けると、建物の倒壊、火災の発生などで近隣住民に多大なる迷惑をかける危険性があり、一刻も早く対応をすることが必要な状況です。

 

放っておいた地方の空き家が、気づいたら特定空き家に指定されており、いますぐに対策をしなければならないといった状況に陥らないよう、空き家になった時点で対策を講じておく必要があります。

空き家の活用方法

では最後に、増え続けている空き家の活用方法を考えていきましょう。

相続土地国庫帰属制度

「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる新しい制度です。

ただし、注意すべき点として「建物や工作物等がある土地」には適用されないため、一度更地にする必要があります。

空き家を解体して相続土地国庫帰属制度を利用したい場合、

①法務局に承認申請

②法務大臣(法務局)による審査・承認

③審査完了

④負担金の納付

⑤国庫に帰属

という流れになります。

メリットとしては、自身で買主を探さなくてよく、不要な土地だけを手放せる、国との取引のため安心である点があげられますが、デメリットとしては、審査に時間がかかり、費用もかかる点があります。

自身で管理や売却が難しい場合は、こちらの制度を利用してみるのもいいでしょう。

空き家バンク

空き家バンクという行政のサービスの利用も可能です。

「空き家バンク」とは、全国の市区町村が実施している空き家解決のための施策であり、空き家・空き地のマッチングシステムです。

 

自身の空き家・空き地を空き家バンクに登録し、空き家・空き地を借りたい人が空き家バンクから目当ての物件を探すシステムで、登録は無料です。

また、自治体によっては、空き家バンクに登録することを条件にリフォームなどで使える補助金を支給している場合もあります。

 

空き家バンクの他にも、民間企業で空き家管理サービスを行っている企業やNPO法人も多く存在しますので、相談してみるのも良いでしょう。


空き家問題は、人口減少が続く日本において、解決しなければならない大きな問題です。
ヨーロッパやアメリカのように古い物件をリノベーションし住み続けるというよりも、新築物件を建て続けるという風潮の日本では、住宅の需要と供給が合わなくなるのも当たり前のことといえるでしょう。

自身の物件が「負動産」となる前に、相続問題や管理体制をあらかじめ親族で話し合っておくことが重要です。
いざ空き家となってしまったときに焦らずに対処することで、損をすることなく運用していきましょう。

  

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