アパート経営に関する減価償却とは?これで基本が丸わかり!
アパート経営をするうえで、税金や経費の知識はとても重要です。
なかでも、「減価償却」を理解しておかないと確定申告も難しいでしょう。
そこで今回は、アパート経営に関する減価償却について詳しく解説していきます!
さらに、ご所有の物件をリフォームした際の経費は、経費の種類によって減価償却処理が必要かどうか決まります。
修繕費と資本的支出の違いについて、どのように分類するのかについても解説します。
減価償却の考え方
まず、「減価償却」とはどのような意味を持つのか理解しておきましょう。
国税庁の減価償却のページには、下記のように記載されています。
減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
つまり、固定資産を購入した際に、資産の耐用年数に応じて年毎に分割で経費として計上する手続き、ということです。
例えば、企業が100万円のコピー機を経費で購入し、その耐用年数が10年だと仮定します。(コピー機の実際の耐用年数とは異なります)
この場合、1年あたり10万円を経費として計上していくことになります。
アパート経営の場合の主な減価償却資産
では、アパート経営を行っていくうえでは、どのような資産が減価償却資産となるのでしょうか。
基本的な考え方として、固定資産は減価償却できる資産とできない資産に分けられます。
年数が経つことによって価値が劣化していくものは、減価償却資産であり、
年数が経っても価値が変わらないものは、減価償却資産とはなりません。
主な減価償却資産
建物
電気設備
冷暖房設備
給排水、ガス設備
看板 等
建物自体は、構造によって耐用年数が異なり、耐用年数によって減価償却の計算が変わります。
木造は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造は47年(住宅用の場合)と構造によって耐用年数が異なるため注意が必要です。
設備機器関連は、エレベーターなどの建物自体の付帯設備だけでなく、室内のエアコンや給湯器、トイレなども含まれます。
そのため、アパートを新築したタイミングだけでなく、室内のリフォームを行った際の資産計上の際にも減価償却の対応が必要となります。
減価償却資産とならないもの
土地
借地権
美術品
骨董品 等
土地付き建物を購入した場合、土地は減価償却資産とはならないため、購入した年に経費として計上が必要になります。
なぜ減価償却として計上が必要なのか?
例えば、年間の家賃収入が100万円であり、リフォーム費用が200万円かかったとします。
その場合、他の経費を考えなかったとしても、その年は100万円の赤字となってしまいます。
しかし、リフォームした部屋は一年で使い物にならなくなってしまうわけではなく、何年にもわたって定期的な家賃収入へと繋がっています。
さらに、一括で経費として計上すると、翌年からは経費が発生しないようになってしまいます。
その結果、利益と経費の金額が不正確になり、実際の収支が不明確になってしまうのため、分割して毎年計上する仕組みとなったのです。
減価償却のメリット
減価償却をすることでどのようなメリットがあるのでしょうか。
①節税になる
給与所得を得ている場合、所得税や住民税は所得によって計算されます。
そして、不動産を購入した費用を「減価償却費」として経費計上でき、家賃収入よりも経費が多かった場合、赤字となります。
不動産投資によって生じた赤字は、給与所得と損益通算ができます。
損益通算とは課税所得額から赤字分を控除し、課税所得額を減らすことを言います。
課税所得額が減ることで、課税額を減らすことができ、正しく減価償却することで節税につながります。
②損益を正しく把握できる
減価償却を活用することで、不動産投資の損益を正しく把握できます。
仮に、建物の購入費用やリフォーム費用などの高額な資産を一括計上した場合、その年の利益額が一時的に大きく下がり、翌年以降の利益額が急激に上がることになります。
これは、不動産経営の収支を正しく反映しているとは言えません。
減価償却により収支状況を正しく把握できれば、リフォームやその後の売却の計画も立てやすいでしょう。
減価償却の計算方法
では、実際にどのように減価償却費用を計算するのか解説していきます。
計算方法は、「定額法」と「定率法」の二種類に分けられます。
【定額法】
「定額法」とは、毎年同じ“額”だけ減価償却する方法で、毎年一定額が費用計上されます。
定額法で減価償却費用を算出するのは、外壁塗装や共有部リフォームなどの建物部分に該当するリフォーム・リノベーションなどです。
定額法の計算方法は、減価償却資産の金額に定額法の償却率を掛けて減価償却費を求めます。
償却率は、耐用年数ごとに定められており、耐用年数が2年なら、償却率は0.500と決められています。
例えば、木造の建物を100万円かけて共用部リフォームした場合を計算してみましょう。
木造の建物は耐用年数が22年となっていて、償却率は0.046と決められています。
100万円×0.046=4万6,000円
この場合、毎年4万6,000円を減価償却費として計上できることになります。
耐用年数ごとの減価償却率は国税庁が公表しているため簡単に調べることができます。
減価償却資産の償却率等表|国税庁
定額法のメリット
・計算方法が簡単なためわかりやすい
・初年度の減価償却費が定率法よりも少ないため利益が大きくなる
定額法のデメリット
・のちのち経費の割合が高くなる
・初年度の節税効果が限定的
【定率法】
「定率法」とは、毎年同じ“率”で減価償却するほうほうで、償却費は初年度に高く、低減していきます。
定率法は、毎年同じ額を償却するわけではなく、年数が経過するごとに償却費が減っていく計算方法になります。
ただし、一定の額を下回った後は、毎年同じ金額になります。
水回り設備のユニットバスやトイレ、電気設備(照明、エアコン)の交換など、建物に付随する設備交換をした場合に、定率法を用いることが多いです。
定率法の計算方法は、未償却残高に対して償却率を掛けて減価償却費を求めます。
未償却残高は、減価償却資産を取得した金額から、減価償却した金額を差し引いた残高です。
その金額に定率法の償却率を掛けて求めます。
定率法の償却率も国税庁が公表しているので確認できます。
実際に計算してみましょう。
ユニットバスを100万円かけて交換した場合を例に挙げてみましょう。
ユニットバスの耐用年数は15年とされているので、償却費は0.133 となります。
1年目:(100万円-0)×0.133=13万3,000円
2年目:(100万円-13万3,000円)×0.133=11万5,311円
・
・
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と、毎年金額が変わり、年数が経過するごとに償却費が減っていきます。
定率法のメリット
・初年度に大きく経費計上ができるため、初年度の節税効果が高い
・定額法に比べ、取得費用を早めに回収できる
定率法のデメリット
・計算方法が複雑
・のちのち節税効果が薄くなる
定額法と定率法、どちらの方法を使って費用計上するかは、費用の種類や今後の資産計画に沿って決めていきましょう。
心配な場合、税理士などのプロに相談して決めましょう。
リフォームの際は要注意!修繕費と資本的支出の違い
アパートやマンションを所有していれば、リフォーム・リノベーション工事は欠かせません。
では、これらの工事にかかった費用はどのように計上するのでしょう。
修繕費と資本的支出
リフォームを行った場合の費用は、「修繕費」もしくは「資本的支出」のどちらかに分けられます。
そして、修繕費は減価償却できませんが、資本的支出は減価償却できるという大きな違いがあります。
修繕費とは
修繕費とは、物件の修理や改良のために支出した費用のうち、その物件の定期的なメンテナンスや、壊れた箇所を修理するような原状回復を目的として支出した部分の金額のことをいいます。
退去後の原状回復工事などの簡単なリフォームの費用は「修繕費」として経費処理されるため、減価償却を行う必要はありません。
修繕費の具体例
- 工事費用が20万円以内のもの
- 原状回復のために行われたもの
- 工事費用が20万円を超えているが、3年以内に定期的に行っているもの
- 災害で被害を受けた箇所の原状回復のために行われたもの
資本的支出とは
資本的支出とは、物件の修理や改良のために支出した費用のうち、その物件が長く使えるようになり、価値を向上させた部分に対応する金額のことをいいます。
工事費用が資本的支出と判断された場合、減価償却費として計上することができます。
資本的支出の具体例
- 工事費用が20万円を超えるもの
- 元の状態より価値を高めたもの
- 販促を目的とした改装や増築・設備の追加
- 災害に備えて設備を強化・追加した場合
個人で不動産投資をしている場合などは、リフォーム・リノベーションをした際はその年に一括で経費計上できた方が、節税できるため修繕費として計上してしまいがちです。
しかし、本来は「資本的支出」であるのに、「修繕費」として一括計上してしまうと、税務署から否認されて余計な出費につながりかねません。
どちらの費用区分になるのか工事内容や金額をもとに判断し、資本的支出に当てはまるのであれば、減価償却を行いましょう。
不動産を購入した際や、リフォーム・リノベーションを行った際の減価償却について解説してきました。
節税にもつながるため、費用計上の際には減価償却の考えを理解しておきましょう。
また、不明点や判断が難しい場合は、信頼できる税理士などのプロに相談するのがおすすめです。
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