【2024年最新版】入居者に人気の設備ランキング

賃貸経営を成功させるためには、「いまの入居者がどんな設備を求めているのか」を正確に把握することが欠かせません。
家賃や立地だけでは差別化が難しい時代だからこそ、“設備の充実度”が入居者の意思決定に直結する傾向が年々強まっています。
今回のコラムでは、そのヒントとなる「入居者に人気の設備ランキング 2024」(全国賃貸住宅新聞発表)をもとに、最新の傾向を分析します。
このランキングは、全国の不動産会社・管理会社を対象にアンケートを実施し、「単身者向け」「ファミリー向け」に分けて集計されたものです。
現場の声を反映した“リアルな入居者ニーズ”がわかる調査といえます。
ここからは、そのデータを踏まえて、人気設備の動向や導入メリット、そして今後の賃貸経営における戦略のヒントを解説していきましょう。
【必須設備編】この設備がなければ入居が決まらない
まずは、入居者が「この設備がなければ契約を見送る可能性が高い」と考える、いわゆる必須設備のランキングから。
2024年版では、次のような順位構成となっています。
| 単身者向け | ファミリー向け | ||
| 1位 | エアコン (前回1位 →) | 1位 | エアコン (前回1位 →) |
| 2位 | 室内洗濯機置場 (前回3位 ↑) | 2位 | 室内洗濯機置場 (前回2位 →) |
| 3位 | TVモニター付きインターホン (前回2位 ↓) | 3位 | TVモニター付きインターホン (前回3位 →) |
| 4位 | インターネット無料 (前回4位 →) | 4位 | 独立洗面台 (前回4位 →) |
| 5位 | 温水洗浄便座 (前回5位 →) | 5位 | 温水洗浄便座 (前回6位 ↑) |
| 6位 | 独立洗面台 (前回6位 →) | 6位 | 追いだき機能 (前回5位 ↓) |
| 7位 | エントランスのオートロック (前回8位 ↑) | 7位 | インターネット無料 (前回7位 →) |
| 8位 | 宅配ボックス (前回7位 ↓) | 8位 | システムキッチン (前回8位 →) |
| 9位 | 備え付け照明 (前回9位 →) | 9位 | エントランスのオートロック (前回9位 →) |
| 10位 | 高速インターネット(1Gbps以上) (前回10位 →) | 10位 | 宅配ボックス (前回11位 ↑) |
(参照;全国賃貸住宅新聞「2024年人気設備ランキング」)
以下、この順位をもとに、各設備の人気背景と導入の意義・注意点を見ていきます。
1位:エアコン(単身・ファミリー共通)
2024年も、単身者向け・ファミリー向けともに、エアコンは揺るぎない1位でした。
人気の背景:
日本全国で、夏場の猛暑化が進んでおり、もはやエアコンは住宅の必需品になりつつあります。特に北海道や寒冷地でも、生活スタイルの変化で冷暖房のニーズが高まっています。
入居者側からすれば、エアコン設置は引っ越し時のコスト負担(購入・設置工事)を軽減できるため、大きな魅力となります。設置コストが10万円程度かかることもあり、設備として備えるメリットを訴えています。
他物件との差別化を図る上で、「エアコン付き」はアピールポイントになりやすく、内見時の訴求力も大きいと言えます。
導入上の注意点・ポイント:
古いエアコンを使いまわす場合、省エネ性能や耐久性に問題が出ることがあります。定期的なメンテナンスや清掃、適切な処分を前提とした導入設計が望ましいでしょう。
室内の広さや向きに合った能力の機種を選ぶことが重要。オーバースペックすぎても初期コストが嵩みますし、逆に能力不足だと十分な冷暖房ができずクレームにつながります。
室外機の設置スペースや騒音対策、配管経路など、リフォーム時の設計段階で配慮が必要です。
2位:室内洗濯機置場
単身者向けでは3位から2位へランクアップ、ファミリー向けでも引き続き2位という結果でした。
人気の背景:
屋外やベランダ設置ではなく、室内に洗濯機置場があることで、雨の日や寒暖・湿度の影響を受けずに洗濯できる利便性が高く評価されています。
屋外設置が一般的だった時代から生活様式の変化とともに、室内設置のニーズが確実に上昇しています。
導入時のポイント:
防水パンの設置、給排水配管の確保、電源確保(アース付きのコンセント)など、配管経路と安全性の確保が必須です。
防水性や耐久性のある床材を選定するなど、漏水リスクに備えた設計が望ましいでしょう。
3位:TVモニター付きインターホン
セキュリティ設備として根強い人気を誇る「TVモニター付きインターホン」は、単身・ファミリーともに3位。
前年度では若干順位を落としているものの、その重要性は揺るぎません。
人気の背景:
インターネットや周辺環境の変化もあり、入居者の防犯意識が高まっています。特に女性の一人暮らしや、小さなお子さまのいる家庭では、来訪者を目視できる安心感が強く求められます。
モニター付きインターホンは導入工事が比較的簡単で、費用対効果が高い設備とみなされることが多いです。
導入時の注意:
モニター画質やカメラ性能、夜間撮影の可否なども評価対象となり得るため、導入機種選定には慎重さが求められます。
配線ルート、電源確保、操作性(使いやすさ)にも注意を払いたい設備です。
4位以降の設備
以下、4位以降にランクインしている設備も、いずれも無視できない存在です。
インターネット無料(単身者向け4位)
家賃に上乗せできる形で提供されることが多いものの、入居者の負担軽減になる点からニーズは根強いです。独立洗面台(ファミリー向け4位)
朝の支度時間帯を重視するファミリー層には、独立した洗面化粧台があるかどうかが重要視されます。温水洗浄便座(単身/ファミリーとも5位)
日本国内で定番化している設備で、これがないと快適性で見劣りする印象を与えてしまうこともあります。追いだき機能(ファミリー向け6位)
家族で風呂を共有する生活スタイルでは、追いだき機能の有無が入居判断の材料になることがあります。オートロック、宅配ボックス、システムキッチン、高速インターネット、備え付け照明など
これらは主に安全性・利便性・快適性に関わる設備群で、単身・ファミリー双方で幅広くランクインしています。
これらの設備は、単体ですべて導入するのはコスト的に難しい場合もありますが、「目玉設備+補助設備」の組み合わせで戦略的に導入を検討する価値があります。
イエスリノベーションでは、賃貸物件専門のデザインリノベーションを行っています。
上記の工事も全て可能です!
ぜひ空室物件をご所有のオーナー様はお問い合わせください。
現地調査・お見積もりは無料です。
【付加価値編】この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる
次に、入居者が「多少家賃が高くても、この設備があれば契約を決めやすい」と考える設備群を見ていきます。
付加価値編は以下のような順位になっています。
| 単身者向け | ファミリー向け | ||
| 1位 | インターネット無料 (前回1位 →) | 1位 | インターネット無料 (前回1位 →) |
| 2位 | 宅配ボックス (前回4位 ↑) | 2位 | エントランスのオートロック (前回2位 →) |
| 3位 | エントランスのオートロック (前回2位 ↓) | 3位 | 追いだき機能 (前回3位 →) |
| 4位 | 高速インターネット(1Gbps以上) (前回3位 ↓) | 4位 | 宅配ボックス (前回5位 ↑) |
| 5位 | 浴室換気乾燥機 (前回5位 →) | 5位 | 高速インターネット(1Gbps以上) (前回6位 ↑) |
| 6位 | ペット用設備 (前回-位 NEW!) | 6位 | システムキッチン (前回4位 ↓) |
| 7位 | 独立洗面台 (前回6位 ↓) | 7位 | ペット用設備 (前回-位 NEW!) |
| 8位 | ガレージ (前回14位 ↑) | 8位 | ガレージ (前回10位 ↑) |
| 9位 | システムキッチン (前回7位 ↓) | 9位 | 浴室換気乾燥機 (前回7位 ↓) |
| 10位 | 追いだき機能 (前回15位 ↑) | 10位 | エレベーター (前回12位 ↑) |
(参照;全国賃貸住宅新聞「2024年人気設備ランキング」)
1位:インターネット無料(単身者・ファミリー共通)
付加価値編においても、単身者/ファミリー双方で堂々の1位。
単身者向けでは10年連続の1位、ファミリー向けでも9年連続という長期的な人気ぶりです。
人気の背景:
インターネット無料設備は、入居者にとってランニングコストを抑えられる明確なメリットがあります。月額使用料を気にしなくて済むという安心感も大きい。
特に若年層やリモートワーク層、動画視聴層など、インターネット利用頻度が高い層では強い訴求力を持ちます。
若い世代のテレビ離れと相関しており、動画視聴を中心としたネット中心の生活スタイルと結びついていると考えられます。
ファミリー向け物件では、家賃を5,000円程度上げても契約につながった事例もあるという記述があります。
導入の課題・注意点:
インターネット設備を導入する際には、通信速度、回線方式、プロバイダー対応、回線容量(帯域)など、技術的な設計が重要です。
共用回線と専用回線、回線事業者との契約形態、保守運用体制について事前に検討しておく必要があります。
入居者への説明や契約条項(速度制限・利用条件)を明確にしておかないと、クレームの温床になる可能性もあります。
インターネット導入については、下記のコラムで詳しく解説しています。
ややこしく感じるインターネット導入ですが、ぜひこちらの記事を読んで導入を検討してみてください。
宅配ボックス、オートロック、追いだき機能、高速インターネットなど
以下、それぞれ注目ポイントを整理します。
宅配ボックス(単身:2位/ファミリー:4位)
宅配ボックスは単身者向けでは大きく順位を伸ばし、2位に浮上。
不在時の受け取りを可能にするこの設備は、共働き世帯やネット通販利用者にとって大きなメリットとなります。
導入にあたっては、設置スペース、セキュリティ機能(暗証番号・ロック)、堅牢性などに配慮が必要です。
オートロック(エントランス)
単身・ファミリー両方で高ランクに位置し、セキュリティ面での価値が引き続き評価されています。
もともと人気だった設備ですが、さらに注目が集まる傾向にあります。
高速インターネット(1Gbps以上)
単身者向けでは4位、ファミリー向けでも5位と、比較的高い順位を維持しています。
単に「インターネット無料」を導入するだけでなく、高速対応をうたえるかどうかが差別化要素になる可能性があります。
浴室換気乾燥機
単身者向けで5位、ファミリー向けでも9位にランクイン。
浴室乾燥機能は洗濯物の乾燥手段として、また風呂場の湿気対策としても重宝されます。
ペット用設備(NEWランクイン)
今回のランキングで、初めて単身者/ファミリー両方でペット用設備がランクイン。
コロナ禍以降のペット需要の高まりも背景にあり、ペット可物件の希少性も追い風となっています。
ただし、ペット可物件にする際は、床材・防音性・躾ルール・共用部管理など注意すべき点も多岐にわたります。
ペット可物件にする際の注意点やメリット・デメリットをこちらの記事で紹介しています。
こちらもぜひご覧ください。
ガレージ、システムキッチン、エレベーターなど
ガレージは単身者6位→8位、ファミリー8位、いずれも順位アップ。自動車を所有する層への訴求力があります。
システムキッチンやエレベーターも、快適性・物件格の向上という観点で評価されており、上位に名を連ねています。
トレンドの変化・ポイント整理
2024年ランキングを前年版と比較すると、いくつか興味深い変化ポイントが浮かび上がります。
必須設備には安定傾向だが、順位の入れ替えも
エアコン、室内洗濯機置場、TVモニター付きインターホン、インターネット無料、温水洗浄便座、独立洗面台など、上位常連の設備が引き続き上位を占めています。
ただし、単身者向けでは室内洗濯機置場が2位へ浮上、エントランスオートロックのランクアップなど、微妙な順位変動が見られます。
つまり、「必須設備」はもはや標準ライン化しつつあり、それを確保した上で差別化要素をどう加えるかが運用戦略の鍵になるでしょう。
付加価値設備での「ペット対応」の登場
ペット用設備が付加価値編で初めてランクインしてきたことは、ここ数年のライフスタイル変化を反映するトレンドです。
ペットブームや「ペットと暮らしたい」層の増加は、賃貸市場における新たなターゲット設定の可能性を示しています。
通信・ネット関連設備のさらなる重要性
「インターネット無料」が付加価値編で1位を維持していることは、今や通信環境が住まい選びの基準になっている証左です。
さらに、「高速インターネット (1Gbps以上)」のランクイン・維持は、通信性能を訴求した物件が差別化しやすいということを示しています。
設備導入のしやすさ・コストとのバランスが鍵
上位にランクインしている設備の多くは、比較的短工期・低コストで導入可能なものが中心です(例:エアコン、モニター付きインターホン、宅配ボックスなど)。
設備投資は初期費用・メンテナンスコスト・導入難度といったリスクも考慮したうえで、費用対効果を見極めることが重要です。
オーナー視点で考える設備導入戦略
設備を全て入れれば確実に入居者の満足度や契約率が高まるというわけではありません。
以下は、オーナー様が設備導入を検討する際に意識すべきポイント・戦略の視点です。
目玉設備を軸に、補完設備で付加価値を加える
まずは「エアコン」「室内洗濯機置場」「モニター付きインターホン」など、入居者が“必須”と認識しやすい設備を軸に押さえながら、資金や建物条件に応じて「インターネット無料」「宅配ボックス」「ペット対応」などの補完的な付加価値設備を加えていく手法が現実的です。
物件のターゲット層を見据える
単身者向け物件では「通信環境」「宅配ボックス」が特に重視されやすく、ファミリー向けでは「独立洗面台」「追いだき機能」「ペット対応」などが評価されやすい傾向があります。
物件が立地する地域や入居想定層を見定めたうえで、導入設備を厳選することが大切です。
初期コストとランニングコストのバランスを取る
導入費用の回収見込み(家賃上乗せ可能性、空室改善効果など)を見込んで、投資判断を行いましょう。
設備のランニング維持費(電気代、メンテナンス費、故障対応費用など)も見過ごせないコスト要素です。
既存の設備を使いまわす場合には、寿命や修繕対応性も勘案して判断しましょう。
将来的な拡張性・交換性も考慮する
設備は“設置して終わり”ではなく、長期にわたって使われる前提でメンテナンス性や交換しやすさを配慮しておくことが望ましいです。
将来的な技術進化に対応できる余力を残す設計も、付加価値を保つ上で有効です。
差別化要因として「特色設備」を取り入れる
例えば、「スマートロック」「高性能換気システム」「床暖房」「サウンド設備」「IoT家電連携」など、先進性や付加性の高い設備を一部導入することで目を引く物件に変化させることも可能です。
これは特に競合物件の多い地域で差別化を図る際に有効です。
設備導入で「空室」から「選ばれる部屋」へ
2024年版の「入居者に人気の設備ランキング」を振り返ると、必須設備・付加価値設備の双方において、通信(インターネット)、防犯・セキュリティ(オートロック、モニター付きインターホン)、利便性(宅配ボックス、室内洗濯機置場)、快適性(エアコン、温水洗浄便座、追いだき機能など)が強く支持されていることがわかります。
特に注目すべきトレンドとしては、ペット対応設備の初ランクイン、通信速度性能の訴求、設備の組み合わせによる差別化が挙げられます。
オーナー様が設備導入を検討する際には、以下のような視点を大切にするとよいでしょう。
「必須設備」をまず押さえる — 入居決定率に直結する設備群は抑えておくべき基礎。
ターゲット層を意識した付加価値設備の選定 — 単身者/ファミリー、立地特性、競合状況を踏まえた設備構成。
コストと効果のシミュレーション — 導入費用回収の見通し、維持費・メンテナンス費も含めた試算。
将来性・交換性を見据えた設計 — 長期運用を見越した拡張性・保守性を意識する。
差別化設備の導入も検討 — 他物件との差を作るため、特色設備(IoT、スマート家電、先進設備など)を一部導入。
設備投資は決して安価ではありませんが、適切に選び、段階的に導入を進めることで、物件の魅力を高め、空室率の低下・家賃維持・上昇につなげることが可能です。

